なぜこんなことに?/舞台『呪術廻戦』感想

ごめん!!あんま褒めてない!!

 



もくじ

 

はじめに

なんかもっとブログに書いたほうがいいことはたくさんあるし私としてもこういうことは書きたくないのだが、いつかも言ったように、素晴らしくても特に言葉で感想が出てこない作品もあれば、ひどくても語る文脈をもつ作品はあり、じゅじゅステは私にとっては後者だった。ので、手短に書きます。

なんかさー、こういう、自分が観て「どちらかというとよくないと思ったもの」について書くと絶対、わざわざ言う必要あるか?っていう問題にぶちあたると思うんだけど、そういうときはsaebou先生が仰っていた以下の言葉を思い出すようにしてる。私が何かの感想を語るときの指針としている考え方なので、改めて書いておきます*1

 

作品が興味深く思えるというのは、作品が優れているというのとは違います。批評は、対象を優れていると褒める必要はありません。ものすごくひどい作品でも、いったい何が問題なのかなど、いろいろな論点があるはずです。批評というのは、そういう論点を明らかにするプロセスです。ひどい作品を見た後でそれに関する批評を読むと「そうそう、そこがこういう理由でひどかったんだ!」と思うことがあると思います。批評を読んだ後でもその作品はひどいままですが、ちょっとだけ興味深くなります。*2

(前略)ここでひとつ強調しておきたいのは批評をする時の解釈に正解はないが、間違いはある、ということです。よく、解釈なんて自由だから間違いなんかない、と思っている人がいますが、これは大間違いです。間違った解釈というのは、とくにフィクション内事実の認定に関するものを中心に、けっこうあります。フィクション内事実の認定というのは、ある物語の中で事実として提示されていることを正確に押さえられているかどうかです。たまに映画批評などを読んでいると「いや、そいつそこで死んでなくない?」とか「それ、説明する場面が最初にあったでしょ」みたいな突っ込みを入れたくなることがありますが、そういう誤読ですね。いくら解釈が自由だと言っても、作品内で提示されている事柄の辻褄がおかしくならないように読まなければなりません。*3

 

特に下の引用については、その昔映画刀剣乱舞が公開されたときに「この本丸の初期刀は蜂須賀」っていう長文独自解釈をツイートした人が大バズりあそばれになって、信者たちが「さすがの考察です!泣きました(涙)」とヨイショしている一方で、マシュマロなどで「映画に蜂須賀出てきてないんですが」と投稿されまくるというクソツイッター事件を覚えていた私にはなるほどと深く刺さる内容でした。”存在しない根拠で何か結論を出すのは、考察ではなく妄想”の精神で、まいりたいと思います。

 

なんか感想が出てこないんだよね

もともと事前情報は入れないようにしていて、それでも2人くらい、私より前に見た方の感想が流れてきたので薄目で見ていたのですが、2人とも褒めてはないな…とは思っていたので、結構、賛否ある感じなのかしら?とは思いながら観劇しました。

で、見始めてわりとすぐ「そういうことか~笑」と思いました。

なんか~いいところも全然あるんだけど~、悪いところもあるって感じで~、なんかこう…「どんな感想を持ったらいいの?」って感じの舞台でした。酷評するやる気もないけど、原作者や呪術廻戦のファンは、この内容でOKなのかな??ってかんじ。OKならいんですけど。

 

よくなかった部分があるかといわれたら

個人的な意見としては、不要なギャグパートが多すぎる上に全部つまらないっていうのがいちばんヤバかったなーと思います。最初のオカ研のくだり(オーバーな身振り手振りで喋ったり、全員で声をそろえてセリフを言ったり)からもう寒かったんだけど、そのノリがわりと定期的に出現するので、そう、これは…共感性羞恥!って感じでした。ギャグパートを観てるときに、「面白い」よりも先に「やらされてる役者がかわいそう」と観客に思わせた時点で、そのギャグパートはギャグとして成立していないのではと思います。

なんていうのか、本当にギャグパートが滑り続けてて、観てるほうもわりとしんどい。役者はちゃんとやってるんだけど客席が全然笑わない空間、だいぶ悲しい。

 

そして、今からシリアスシーンです!ってときにもギャグパートが挟まるので、観客としては感情が一旦そこで切れてしまうというか、集中できなくなるんですよね。物語にのめりこもうとさせてくれない空間を、まさか脚本側から提示されるとは…という感じでした。ナナミンの戦闘シーンの前のギャグパート、いるか?(そしてすいません、もうどんな内容だったか覚えてません)

 

あとこれは、舞台を製作している側の人たちにまったくそういう意識がないのであれば言いづらいことだけど、アンサンブルがでしゃばるとしらけるっていうのをちょっとでも心のどこかにとどめておいてほしい。稽古期間ずっと一緒にいて仲良くなって辛いこと一緒に乗り越えてきて、熱くなるのはわかる。でも、観客にとっては知らない人なんですよね…それをふまえてですが、じゅじゅステはなんでか知らんけど日替わりシーンっぽいギャグパート(ものすごくつまらない)がなぜかアンサンブルの人たちによってまわされており、この空間誰の需要があんの?????って思いました。

日替わりパートとかちょっとしたアドリブは、主要キャストが言うから楽しいのでは!?!?!

知っているキャラクターを演じているわけでもなく、知っている役者でもない人が、つまらないことをやっている時間。なにこれ?

せめて面白いならまだ見れるけど、本当にまじでめちゃくちゃものすごくつまらないので、怒りとか悲しみ通り越して「なんでこんなシーンを入れようと思ったんだろう?」と純粋に疑問がわきました。

 

だって、この世にローンチされているということは、誰かがこのシーンの脚本を書いたり、演出を決めたりしてるわけだから、誰かが発案して、それを多くの人間のチェックを通して世に出されてるんだと思うし、その過程で誰も「このパートはマイナスの影響が出る」って言わなかったのかな??っていう、プロジェクトマネジメント目線で不安になった。だって、天下の少年ジャンプの呪術廻戦ですよ!?!?!鬼滅の刃終了後の少年ジャンプを支える看板作品と聞いておりましたが!?!?!?!

コンテンツ制作のプロ集団(原作漫画も、舞台も)が関わっているはずなのに、すべての人間のチェックをすりぬけてこれがローンチされているので、関係者全員、寒いギャグが好きだった可能性はありますね。もしくは、反対した者は皆殺されてしまったのかも…

 

あとは、思った以上にミュージカルだったんですけど、歌唱パートの挟まり方も不自然で、ミュージカルってただストレートプレイと歌唱パートをテレコに入れればいいというわけではないという大前提を改めて思い返しました。よく、「ミュージカルは急に歌いだして不自然」とちゃかす人がいるけど、グランドミュージカルを観ているときに「いやなんで今歌いだすんだよwww」とは思わない私がじゅじゅステではかなり思ったので、とにかく、歌唱パートもほぼほぼいらなかったのでは???というのが個人的な感想です。

五条先生がラップしはじめたときは「りょんくんに変なことさせないでくださー--い!!」と3階席から叫んじゃおっかな?て思いました。

2年生紹介ソングの共感性羞恥は恥ずかしすぎます。キャラ崩壊大丈夫?

あと、ダンスシーンもかなり唐突と感じるものが多くて、特に「なんでこのシーンで、バックダンサーの衣装これなの?」みたいなチグハグ感があるとこも多々あり… 場面を華やかにするためにバックダンサーを用いたい部分があるのはわかるけど、違和感を感じてしまう箇所も多かったです。

 

それでも、「歌パート不自然すぎるけど役者がきっちりやってるから場として成立してるな」と思わせられるシーンもいくつかありました。野薔薇ちゃん登場シーンの、スカウトされたらどうしよ~の歌は、女優さんの歌のうまさで全部成立させてる力を感じました。

呪術廻戦って基本的に話も世界観も暗いから、ベッタベタコッテコテなミュージカル風にするよりも、もっと洗練された雰囲気のストレートプレイにしたほうが相性よかったのかもな~と思いました。

 

アニメーション演出は個人的には好きだったけど

ここも賛否分かれそうだな~と思ったのは、舞台上の幕(なんていうの?緞帳ではない、半分透けてるやつ)に映し出されるふんだんなアニメーション演出です。プロジェクションマッピングかな?個人的には結構好きで、「さすが漫画原作だな~!生身の人間と、アニメーションでしか再現できない演出が混ざり合うなんで、二次元と三次元の中間にある2.5次元舞台ならでは!」とか思ってたんですが、途中で他の三次元部分に思うところがありすぎたのと、アニメーション演出がたくさんたくさん出てきたことによって「じゃあアニメでよくない?」って感情になりました。笑

本当に別にこんなことは言いたくないんだよ私も

How do I live on such a field?こんなもののために生まれたんじゃない

 

キャストはみんなとてもよかった

主要キャストはほぼ全員、キャラクターにもハマってたし演技もうまく、とてもよかった!!特にやはり、りょんくんの五条先生は個人的には完璧だったので、彼の五条先生を観るためにチケット代8,800円払ったと思える。

悠仁役のりゅうじくんは安定のうまさ&かわいさ&ダークな少年ぽさ&主人公性。さすが。

野薔薇ちゃん役の豊原さんはうまかったし似てた~!お歌が上手。ミュージカル畑の方なんですね!あのクオリティは確かにちょっと2.5では異質。

2年生3人組もみんなよかったと思う。高月さんは(思い出のマーニーの人だ…!)って思いながら観たけど、背の高さや雰囲気がまきさんにあっててよく似合ってた。定本くんのおにぎり先輩も、あ~こういう役、定本くんやるのわかる~!ってかんじ。セリフ少なそうだが、地味に、どの場面でどの具材名言うか覚えるの大変そう。

ナナミン役わだまさなりは、わだまさなり節抑え目で(?)無表情で静かな雰囲気がちゃんと伝わってくる感じがしてよかった。

あとは夏油を演じてたふじたれーさんが、ふじたれーさんこんなのも上手いのね~!って気持ちに。てかなんか喋り方にかなりCV櫻井孝宏を感じて、そういうところもすごいと思った。穏やかで色気のあるしゃべりかた。

真人役のもっくんも安定のうまさで…お歌もうまいし、真人みたいなちょっと変わった色気のある役するとかわいい。

大穴で、順平役を演じていた福澤さんのお芝居好きだった。熱演!すごくうまいと思いました。

 

そもそも私は呪術廻戦ファンというわけではなく、アニメは一通り見たけど~くらいの知識しかなかったため、キャストを見なかったらおそらく舞台は観に行っていないと思う。なんで行ったかってそれはやはり五条先生をりょんくんがするからなのであった。

 

私は仮面ライダーオーズを通った人間なのでりょんくんのことを宇宙一美しい人と思っているのであった。

オーズのアンクはじめ、エリザベートのルドルフ、1789のロベスピエールマタ・ハリのアルマン、あとなんか色々、ドスのきいた声をするりょんくんを観る機会が多かったので、今回初めて「ひょうひょうとしたしゃべりかたをするキャラクター」を演じるりょんくんを観ることができてとてもよかったです。こんなしゃべりかたもできるんだ~!新鮮!!と思ったし、当たり前だが、「ひょうひょうとした喋り方で性格が悪い最強の男(主人公サイド)」っていう特大チート設定の五条先生をばっちり演じてみせたりょんくんはすばらしく最高でした。雰囲気に迫力があるとこが好きです。

五条先生が初めて瞳を見せるシーンはもう、そのちょっと前から(くる~~~!!)って肩に力入れてしまう感じがとてもよい観劇体験でした。みんな見たい、あのシーン。

じゅじゅステに懲りず(?)、もし機会があったら、これからも、ぴったしな役がきたら2.5にもたまに出てほしい… 人外美形の役とか…2.5にはよくいるけど現実に存在しない役…

 

どうしたらよかったのか?って話なんだけど

幸か不幸か、私の周りには呪術廻戦を死ぬほど好きで舞台超楽しみにしてた!という友達はあまりいないので、実際のところ呪術廻戦ファン界隈でこの舞台がどういう受けとめられ方をしているかはよく知らないんだが、だからこそ、繰り返しにはなるんですが、「原作者やファンの方はこれでよかったのかな?」って思う気持ちが結構ある。

実際、自分が大好きで大好きでたまらない作品が舞台化するってなって、じゅじゅステのような改変演出を加えられたら、演出家の実家の前で首吊るかもしれん。

だからこそなんでよりによって呪術廻戦でこんなこと起きんの??って気持ち。もっとマイナーな作品の2.5次元舞台なんていくらでもあるし、そういうのでこういった事故がおきるなら全然わかるのだが、呪術廻戦だよ??って感じ。笑

りょんくんのキャスティングにすべての予算を使ってしまったのだろうか…??

 

まじのそもそも論だが、今回舞台化された原作部分は、基本的には世界観説明パートであって、物語に起承転結があんまないと私は思っている。というか呪術廻戦自体、かっこいいシーンとかっこいいシーンをつなぎあわせた漫画という印象で、登場人物の感情の起伏や物語の起承転結で読み込ませるタイプの作品ではないと思っているから、だからこそ、どこに盛り上がりを作るかとかってかなり考えないといけなかったと思うし、メディアミックスというのは、同じ作品を違うプラットフォームに載せたときに違和感がないように加工するのもひとつの大事な作業だと思っている。

製作スタッフにとってそれが「ギャグパートを入れまくる」だったのだとしたら、Not for meだったな~と思うが、作品の私物化では?という気もする。そういう加工のやり方しか手数がないスタッフだったのだとしたら、アサイン自体が間違ってたのかもしれない(もっと適任はいたのかも)し、あるいは、アサインされた人たちがその中で努力する方向を間違えたのかもしれない。

わからん。

何もわからんが、なーんか、続編やりそうな気配を感じたので、キャストはそのまま、役者以外の製作スタッフは変えたほうが、全世界に幸せが訪れるのではないかと思いました。

 

キャストはとてもがんばってたし、雰囲気も合ってたと思うので、なんか、、人生ってままならないですね…

そういうこともある。

 

あるけど納得いかんこともある。

むなしいね~

 

終わりの言葉が何も思いつかないのですが終わります。キャストは健康に気を付けて最後まで走り抜けてほしいです。

 

【おまけ】

じゅじゅステのグッズにランダム系(アクリルスタンドとクリアカード)がいくつかあるんだけど、そのランダム具合が鬼すぎるので見てほしいwww 五条先生ほしかったけど悠仁か~!ならまだ納得できるけど、五条先生ほしかったけど漏瑚か~!が発生するランダムグッズ、神が許してもオタクが許さんのでは?

jujutsukaisen-stage.com

 

 

linktr.ee

marshmallow-qa.com

 

*1:もちろん、ネガティブなことを書いたときに自分に返ってくる反応を第三者のせいにする意図はありません

*2:北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』P.9

*3:同上 P.12-13