「タロウとかセブンとか父とか母とか、色々なウルトラマンがいるが、彼らは別に家族というわけではない」という知識*1しかない状態で観たシン・ウルトラマン、おもしろかったです!
一緒に観たフォロワーがすでに4回目の鑑賞で、初代ウルトラマンのドラマシリーズも観てるファンだったのであれこれ解説してもらいましたが、後世のために「初見の感想」を残しておきます。当ブログでは、初見の感想は処女の生き血と同程度の価値があるという国際初見感想学会の提言への支持を表明しております。
何回も同じ作品をみた重度のオタクは初見の人の感想が好き
— 江川仮名子@超驚纏ト25a (@karmax00) June 9, 2020
処女の生き血みたいなもん
初見の感想には処女の生き血なみの価値がある。私の好きな言葉です。
鑑賞前の私の知識
冒頭で「たくさんいるウルトラマンたち(?)たちは他人」ということだけ事前に知っていたと書きましたが、映画を見てぼんやーりと、あっこれはわかる、と思ってたことを念のため書きます。
・手をクロスにしてスペシウム光線が出せる
・3分たったら胸についてるタイマー鳴るとかなかった?(※シンウルトラマンには描写なし)
・バルタン星人とかいなかったか?(※シンウルトラマンには描写なし)
以上です。ご静聴ありがとうございました。
ウルトラマン知識0が見た初見の感想
・人間がウルトラマンになるという設定をガチで知らなかった
斎藤工が変身したとき「え!?!?!庵野さんのオリジナル設定なのかな!?!?!」ってめちゃくちゃ驚きながら観ましたが、初代のドラマ1話からこうだそうですwww
本当に知らんかった。ウルトラマンという宇宙人やと思ってました。というかウルトラマンという宇宙人であることは真実なんだけどこんな複雑な設定があったなんて…
・ウルトラマンって味方なんだ…と思った
人間と意思疎通ができる生命体であるということも全然知らなかったし、シン・ゴジラ観たときも「ゴジラってこんな明確に敵なんだ!?」と思ったので、今回も「ウルトラマンって、設定上味方って決まってるんだ!?」って思いました。
よく考えたらウルトラマンには名言があるっていうのはおぼろげに知ってたはずだから、しゃべれるって知ってたはずなんだけど、映画見てウルトラマンが外星人同士でしゃべってるのとか見て、こんなに知性ある感じなんだ!?ってなんか思った。
ゴジラは完全に人間と意思疎通がとれない生命体(≒敵)として描いてたから余計に思ったのかも。
・ウルトラマンって赤とシルバーのイメージだったけど、元は全身シルバーだったの??
そんなことはないらしい。
・ウルトラマンって怪獣を倒す立ち位置なんだね
そもそも、怪獣は地球から(しかも日本の海や地底から)現れる生き物で、それを宇宙から来たウルトラマンがやっつけるという構図なの、初めて知りました。
シンゴジラが完全に人間vsゴジラだったから、ウルトラマンって立ち位置的にどこの人(人?)?と思ってましたが、そーいう設定なのね!と思った。
ウルトマランが多分善人(人?)であるというイメージはおぼろげにあったんだけど、人間は善サイド、ウルトラマンも善サイドとしたら、ウルトラマンは誰と何するんだろう?と思ってました。怪獣が出てきて、怪獣とウルトラマンが戦うんですね。
・そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン…
上に付随する話ですが、なんでそんなに人間を好きでいてくれるの…?
ティザーポスターでも使われていたセリフなので本当に印象的でしたが、別に今回の映画に限らず、「ウルトラマンは人間を好きだから人間を守るために怪獣と戦っている」っていう設定自体に驚いた。
そんな自己犠牲的な宇宙人だったなんて…?
もちろん宇宙観点から見て平和を維持したいとか色々そっちの事情はあるんだと思うけど…それにしても…意外すぎる。なぜそこまで…
・そもそも今回の映画の脚本は初代ドラマと同じストーリーである
初代ゴジラのドラマ版をうまくつないで現代版にまとめた感じらしい。知らんかった。展開をまったく知らんかったので、全部新鮮に面白かった。*2
・青と金のウルトラマン、誰…
セブンとか父とか母とかがいることは知ってたのに*3本当に初めましてのウルトラマンがキーキャラで出てきたので、あっそんなタイプの方もいるんですねと思った。
・ウルトラマンにはリピアという本名がある
まあ、言われてみればあるよね…と思ったが、こちらは庵野さんオリジナル設定らしく、もう初見には何が何だかでした。でもリピアって名前、涼やかでおしゃれだしあってる。*4
映画の全体感想
知識0でも普通にめっちゃ面白かったし、CGのクオリティとかもすごくて、お金かかってる重厚な映画を観たぞー!!という満足感、充実感すごかったです。怪獣モノが大好きなひとたちが作ったんだろうな~というロマンもたくさん感じました。
幼少期にまったく特撮を通ってこなかったため、怪獣ものも大人になってから後天的にちまちま観たくらいなのですが(でもシン・ゴジラとKOMくらいしか観てない)、そもそも「この世には『怪獣もの』というジャンルがある」ってことも最近知った身ではありますが、シン・ウルトラマンもなんていうか、こういうのが大好きな人たちが大人になって自分で企画製作して発表したんだなー!というのを随所に感じました。
初代ウルトラマンを知ってる人ならたっくさんオマージュシーンわかるんだろうな~と思うので、そういう小ネタ解説みたいなのあったら読んでみたい!
あと、結構各所で見かけた気がするセクハラ描写問題はあーこれかー!と思った。まぁ、きもいと思います。長澤まさみをこんなふうに撮るなんて失礼すぎるし観ててかなり居心地悪くなったから、これがなければ評価がかなり変わってたんじゃと思うだけに、なぜこんなことを??と思う。なぜ?って思うのは多分、シン・ゴジラでそういう描写が一切なかったっていう信頼感を裏切られたと感じるのかも。監督は庵野さんではないということがこういうところにも出てたりするのかなあ…。個人的にクリエイターが何かにフェティッシュを感じてそれを撮りたいと思う気持ちは大事だと思うのですが(宮崎駿がメカと美少女、新海誠が童貞ボーイmeetsガール、細田守が家父長制的日本家族とケモショタを、いつまでもいつまでも描いているように…)もちろん批判はされるべきだし、今回の長澤さんの撮られ方はどこも擁護のしようがないでしょう。代わりに怒ってあげたい。今後も庵野さんプロデュースで東映リメイク作品が続く気がするし、根幹には製作人の情熱とロマンを感じるし、邦画でここまでのクオリティのものってなかなかないから、改善してほしいなーと思う。
フェチ撮影でいえば、最初のシルバー版ウルトラマンはすっごく綺麗に撮ってるなあと思った!!!長澤さんが「…きれい…」ってつぶやくシーンがありますが私も同じことを思った。登場の仕方がかっこよすぎるし、スーツ(いや、あれが肌なのか?)の銀色の光沢感や、巨大なサイズ感とか、無表情でミステリアスな雰囲気、めちゃくちゃ強いのが観てて伝わってくること…などなど、すっごくこだわりを感じる美しさでした。
私は人生で初めて見た仮面ライダーで「仮面ライダーの顔が虫みたい」という幼稚園児感想を持ったレベルの特撮0偏差値人間なので、コスチュームものを見て「きれい」って思ったこと自体が初めてでどきどきした!!
あと、米津さんは本当に主題歌つくるのうまい~おしゃれすぎる~~
山本耕史は最高でした。二枚目なのに、あやしくておもしろい男も超似合うよね。
全体的には、シン・ウルトラマンも面白かったんだけど、「シン・ゴジラって本当に隙のない映画だったんだな…」とも思った。俳優の使い方も、日本映画に類を見ないキャスティングだし全部ぴたっとハマっててすごかった。政治劇・会話劇でエンタメをつくるっていう斬新さも驚いたし、ゴジラを311のメタファーとして描くことによるメッセージ性、日本発祥のコンテンツを使って、日本だけが2度経験した痛みを表現した、日本にしか撮れない映画を観たという実感も含めて、完璧な映画だったなと思う。
似た映画を期待して観に行ったけど、結構違うアプローチのものだったのかな?とも思った。シン・ゴジラは「スクラップアンドビルドで国を立て直そうとしてきた人間を信じる力」みたいなことを感じたけど、シン・ウルトラマンは人間焦点よりももっと、ウルトラマンと人間の関係性を描く話だったのかも。
これ以上は私の知識がないので描けないが、でも、ほぼ知識がない人でも「あーおもしろかった!!」って思える映画体験でした。
あとは、これはシン・ウルトラマンに限らずなんだけど、こういう賛否両論が出るコンテンツに対する自分の感想の持ち方について最近考えてたことについてより考えるきっかけになった。今日一緒に観たフォロワーはどちらかというと大絶賛したいらしく、そのぶん、賛否両論あるから称賛ツイートをしづらいらしい。私の周囲の友達の感想もわりとバラバラで「ストーリーはおもしろいだけに、セクハラ描写が不必要すぎて、逆になんで入れた?って思う」とか「ストーリーもキャスティングもシン・ゴジラの方が好きだった」とか、こう書くとネガっぽくなっちゃうが、とにかくまあ、どこに焦点をおいてみてるかでかなり感想が変わる映画なのかも、とも思った。私は「ウルトラマンの基本知識がない状態で観てびっくりしたこと」と「シン・ゴジラと比較しての感想」がメインの視点になっていると思う。
まあ人それぞれ感想が違うのは当たり前だし、長年オタクをやっていると「人が好きって言ってるものは否定しない」には気を付けているほうだとは思うのだが、それでも、うまく話せなかったなー思うことはいまだにある。やっぱり、自分の意見に同調してもらいたいって気持ちで話したときに相手から共感をえられないときの居心地の悪さってあるし、逆もまたしかり。
なんか、数年前くらいからインターネットって「誰も否定されない、優しい世界」が市民権を獲得しすぎてて、こういう、映画の感想も「全員が明らかに批判ポイントだと思った部分(今回でいう、長澤さんの撮り方やシャワーに関するくだり*5 )」以外は否定しづらい風潮はなんとなくある気がする。
それでも私は最近、自分が見て思ったことは自分だけの感想だし、有識者の考察読んで自分の感想みたいにしちゃってるほうがきもくないか?と思うようになった。感想に正誤はないが、考察/批評には正誤がある*6ため、つい、有識者の意見を読みたくなる気持ちはかなりあるのだが、最近はそういうことしないように気をつけよう、と思っていて、自分がそのとき思ったことは、そこに正誤をつけず、「そう思った」ってことを単純に大事にしたいなーと思うのであった。自分の感想に誰かが共感してくれるのはたしかに快楽なんだけど、そこに依存しないようにしたいと思います。
何の話?ってとこに飛躍しましたが、おわりです。