Queenがバンドってことも知らなかった女が映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観た末路

結論から言うと今24時間Queenのことを考えている。こんなはずじゃなかった。子供の頃から洋楽にも音楽にもほとんど興味をもたないまま大人になった私が、ひとつのバンドのことを考え続けているなんて本当に信じられない。それまで好きだったもののこともなんか忘れつつある。それくらい衝撃な出会いだった。困った。困ってない。どうすればいいのか本当にわからないので、有識者のみなさまほんと助けてください…何から勉強すればいいんですか…???

 

映画『ボヘミアン・ラプソディ』、最初は「なんか話題だから観てみるか」くらいの本当に軽い気持ちで足を運んだのです。その時点で私のQueen及び映画に関する知識は「We will rock youを歌ってる人(?)の映画?」くらいのものでした。

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一般的にこの映画は「Queenのことを知らない世代でも楽しめる」という触れ込みだったと思うんですけど、私がこの映画を初めて観たときの正直な感想は「良い映画なのはわかるんだけど、あまりにもQueenについて知っていることがなさすぎてよくわからん……」でした。

そもそも、本当にQueenについて知らなすぎて、2時間映画観てまず思ったことはQueenってバンドだったんだ〜」でした。今思うと本当笑っちゃうんですけど、でも本当にまじで何も知らなすぎて、映画観る前の私は、「Queenって2人組デュオだったんだよ☆」って言われても「へーそうなんだ」って言ってたと思うし、「フレディ・マーキュリーっていうソロ歌手がWe will rock youを歌ってるんだよ☆」って言われても「へーそうなんだ」って言ってたと思う。それくらい知識がなかったんです。これはそもそも私が子どものときから音楽に興味がなくて、まして洋楽なんてもっと聴かない人だったというのもあると思うんですけど、本当にマジでガチで世代じゃない(例えば、フレディが亡くなったとき、私はまだ生まれていない)というのもあると思います。

しかし、映画全体から漂う良映画感と、こんなに世間から支持されているものの良さにピンとこないもどかしさから、「何がわかれば私にもこの映画の良さがわかるんだろう」と逆に興味がわいてきました。

私はなんとなく「この映画って『Queenのことを知っているかどうか』というより、『Queen“どれくらいすごかったか”を知っているかどうか』で感じ方が変わるんじゃないか」と思って、そんなことを考えながら映画館を出ると、その日がたまたまフレディ・マーキュリーの命日だったため、その映画館がメッセージボードを立てかける企画をしていたんです。そこに書かれたメッセージを読むと「ライブエイドが観たくて朝3時までテレビの前で起きていたことを思い出した」「クイーンは私の青春です」「自分もゲイです。フレディのおかげで生きてます」…などの、熱いメッセージがたくさん書き込まれていて、あぁ~~~なるほど、そうか、そういうことなんだな、と、この映画の噛み砕き方が私にも少しわかったような気がしました。私はマジで何も知らんかったけど、多分このひとはカリスマアーティストってやつだったのでは……??と……

年が明けて、映画のアワードシーズンになって、主演のラミくんがゴールデングローブ賞などたくさん主演男優賞をとっていることやそのスピーチの内容が素晴らしかったことに触発され、「もう1回くらい観てみようかな…」と思い始めたのが1月。1回目に観たときから2ヶ月が経っていました。

Queenについてや、役者さんのインタビューなどもちまちま読み始め、なんとなぁ~~~く、4人の顔と名前が一致するようなしないような状態で観たのが2回目。2回目鑑賞後の感想は「ドラムの子めちゃくちゃかっこよくない?????」でした。

いや………………ドラムの子…………………めちゃくちゃかっこよくない…………………………………???????

ブロンドの髪に端正な美貌、愛称が「女殺し」、出るたび違う女の子を連れている、歯学部のインテリ、なんでも口に出してはっきり言うし気に入らないとすぐ物とか投げる、タバコ咥えたままドラム叩いたりするけど友情にアツいタイプで……みたいな………そんなん………そんなん………全世界の乙女が好きなやつじゃんか………??と思いまして、そこではっきり「ロジャー・テイラー」のことを認知しました。推しを見つけると一気に世界の解像度が上がるのは世の摂理かと思いますが、とにかく私の場合はそれを入口に4人の顔と名前と担当楽器とキャラを覚えました。

 

 ↑最初に何かを掴んだ私のツイート

 

 

そこからは早くて、Twitterでロジャーのことを調べまくるかたわら、クイーンのこと、他のメンバーのことをめちゃくちゃな勢いで学んでいきました。映画の時間軸のあとベースのジョンは音楽業界を引退していること、ていうかブライアンとロジャーはまだQueenとして活動していること(そんなことある?!当然解散してるかと思っていた)、Queenは来日したことがあってそのときめちゃくちゃ日本の女の子から人気だったこと、その出来事もあって今もQueen親日家でいてくれているらしいこと………

↑私が最初にロジャーに沼落ちしたのはこのツイートがきっかけでした

 

 

それから、俳優4人(通称ボラプボーイズ)のことも同時期にめちゃくちゃ好きになりはじめ、主役のラミくんはエジプト系アメリカ人で、フレディと同じで移民の子なこと、ブライアンを演じてるグウィリムさんはマジでブライアンに似すぎなこと、ロジャー役ベンくんはやっぱりめちゃくちゃ美貌なこと、ドラムできないのにできるってハッタリかましてオーディションに受かったこと(笑)、ジョン役マゼロ氏は一番のムードメーカーでSNS芸がすごいこと、それから、ボラプボーイズまじで仲良くなりすぎて今でもチャットグループで毎日喋ってること、役者の半分はイギリス、半分はアメリカに住んでるのに月一で会ってること、などなど、調べれば調べるほど供給がありすぎて、私の人生がQueen関連のことでいっぱいになるのにそんなに時間はかからなかったです。加速度的に調べては調べては、もっと知りたい、あれもこれも教えて欲しいってことが溢れてきて、気づけば24時間Queenのことを考える日々になっていました…

 

 ↑私がボラプボーイズに沼落ちしたのはこの動画を見たときでした 言葉を失う…

 

 最近、大学受験以来の英語学習に取り組む私なのであった…(いいことだ…)

 仕事のモチベまでなぜかあげてくれるQueen

 来月のカード明細怖…

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これ本当〜〜〜に大好きな写真!!!

 

 

ここからは映画について書きます。

私は最初この映画を観たとき「これは人生への讃歌なのかな」と思った。人生は複雑で大体つらくて、世界の頂点に立った人たちにも深い孤独や悩みがあり、だけどやっぱり人生には素晴らしい瞬間があって、その祝福が結実した瞬間としてのライブエイドなのかなと。フレディが歌に込めた魂は人生を祝福するものだったのかな〜と。生きること、歌うこと、愛すること…そういうことが行ったり来たりして、重なり合って、響き合う、そういうなにか。

けど、その次に見たときにはこれは人生への讃歌とはいえないと思うようになった。フレディは多分、人生は素晴らしいとか思っていなかったんじゃないかと思ったから。チャーミングでものすごく魅力的な人だったと思うけど、彼自身は誰かのために歌ったりしていないし、彼自身の渇きを癒すために、苦悩を発散するために歌という表現を選んだことが、結果的に世界中の多くの人を救ったけれど、彼自身は誰かを「救おう」とか思って歌っていない(と思った)。

 

そのあと、これってシンプルに青春映画なんじゃないかと思った。特に序盤は顕著で、彼らは学生時代に出会ってバンドを組んでいるので、小さいライブハウスで演奏して、言い合いしたり徹夜でレコーディングしたりしながらスターダムをかけあがっていく姿は青春そのものすぎて本当にまぶしい… 同じ役者さんが15年分くらいを演じているので、序盤のみんな本当にかわいいんです!!

それから、この映画にブライアン・メイロジャー・テイラーが監修で参加していることを知り、そうかあ…と思った。自分たちが生きている間に、って思ったんだろうな……と。この映画ではバンドは家族であると強調して描かれていたし、実際ブライアンはインタビューで自分の家族よりバンドを優先することがあると語っていたので、本当のことなんだろうと思う。一方で、劇中でフレディが吐き捨てる「家族なんかじゃない。君たちには妻と子供がいる、じゃあ俺は?」という言葉の重みもめちゃくちゃわかって、でも、だからこそ、ブライアンはフレディに、僕たちは家族だよって何度でも言い続けたかったんだろうなと思って胸が痛かった。

私なんかには想像もできないけれど、たぶん…… もっと叱ってやればよかった、もっとちゃんと見ておくんだった、殴ってでも止めるべきだった、いやがられても抱きしめてあげればよかった、もしあのとき、もっと、もっと…って、思うことが、ブライアンとロジャーには山ほどあるんじゃないかと思って、でも人の命は不可逆で、一緒に過ごした時間だけがほんもので、残されたひとたちはどうにかして今あるカードを切って残りの人生を過ごしていかないといけなくて、だったら、何ができる、彼へのあふれんばかりの愛とリスペクトの気持ちを、自分たちが世界中の人と共有できる形で昇華するとしたら?って、頭のいい彼らが考えて、そのひとつの答えが、この映画だったのかもと思った。

だからこの映画は、ある側面では確実に、愛の映画だと思う。ほかならぬQueenが、フレディへの愛とリスペクトを形にしたかった、それもフレディの望むように!

この映画に関して、HIVの描写が足りないとかなんとか、そういう批判があることは知っているし、そういった指摘なくしては私は本当の意味でフレディ・マーキュリーが辿った壮絶な人生のことを知る由もなかったから(ゲイかバイセクシャルだったことももちろんこの映画で初めて知った)、そういう第三者からのコメントによって補完されていくのは、悪いことではないと思う。その一方で、死後30年近く経つのに、未だにフレディは世間からの「真実を述べてください!」という暴力に晒され続けているのかと思うと愕然とする。良くも悪くも彼には影響力がめちゃくちゃあるので、移民やLGBTとしての言葉を、世の多くの人がフレディの口から語られることを望んでしまうのは、わからなくもないんだけど。

 

けれど、それで逆説的に、なんでこの映画がフレディの享楽的なゲイ・ライフについて描かなかったのかがわかった気がした。ブライアンやロジャーでさえ「フレディ本人から明確に説明されたことはない」と言っている彼のプライバシーを、あけすけに暴こうとしてくるアウティングと、フレディはずっと戦っていたんだから、ブライアンとロジャーは何よりそういう暴力と戦うために、もう自分では声をあげられないフレディのために、何度でも立ち上がると決めた男の子たちなんだった。そういう愛の在り方の果てしなさに思いを馳せた。誰かの祈りを投影されてしまうのはスターの宿命でもあり呪いでもあるんだけど、フレディはそういうエネルギーに消費されながらもギリギリ消耗し尽くさなかったように私には思えて、それはやっぱりメンバーたちファミリーがいたからじゃないかなと思った。「そう思いたいからそう思ってる」節もあるかもしれないけど、私はそう信じる。見たいものを見せてくれるQueenの引力が好きだし。

 

学生時代から一緒にいて、同じバイト先に勤めたり、売れない時代にルームシェアしたり、スターダムを駆け上がる瞬間を共にして、世界の頂点に一緒に何回も立って、お金のことや音楽のことでめちゃくちゃもめたり、仲直りしたり、そんなことを20年も一緒にやってきた仲間が、一人だけ先に死ぬって、どんなだったんだろう。すさまじすぎて、私には見当もつかない。『ブレイク・フリー』というドキュメンタリー映像でフレディ出棺の日の映像が流れたとき、喪服姿のブライアンが写って、私が気がおかしくなるかと思った。グループ活動をしているひとたちの一人が亡くなって、ほかのメンバーが喪服を着てうつむいている瞬間を目にするのはいつも本当につらい。こんなのリアルタイムで1991年を生きていた人はどんな気持ちでこのニュースを見たんだろうって思う。

 

私がこの映画を見たあとQueenについて調べていくうちに知ったことの中でひとつ、映画からうけた印象と大きく違ったのは「全員が作詞作曲ができる」という点だった。フレディ一人が引っ張るバンドなんじゃなくて、全員が対等な関係だったということをだいぶあとになって知った。本当は1人でも立てる4人が集まって、4人だから最強になったのがQueenというイメージで、それでもなお、この映画が「フレディというスターについて」というメッセージに終始していたの、逆にすごいと思った。自分だったらそんなことできるだろうか。でもやっぱり、ステージに立つフレディの圧倒的なカリスマ性を、メンバーのみんなも好きだったんだろう。とんでもないやつとバンドを組んでしまった数奇な人生を愛しく思って、じゃないと、自分の人生をデフォルメして他人に語らせる、商業エンターテイメントにするなんて、やっぱり、普通の人じゃできない。彼らはスターで、スターであるがゆえに苦しんだことも多かったと思うけど、でも、そういう人生を自分たちで選び戦略的に成功を掴んだ、そういう強さがQueenの魅力だと本当に思う。

 

そしてそんなQueenの願いを、途方もないプレッシャーのもとで形にした4人の若い俳優たちの才能と努力が結実した瞬間を目の当たりにできたのも、ものすごい奇跡だった。フレディとジョンにこの光景を見てほしかったと本当に思った。この映画賞は、映画関係者のものだけど、Queenという4人のロックレジェンドが若い男の子たちに新たなチャンスと栄誉を与えたという意味で、Queenの商業エンターテイナーとしての異次元の才能とパワーを世界中に叩きつけたようで、あんまりにもかっこよくてくらくらした。なんでこんなことができるの、なんでここまでできるのって、くるしいくらい尊敬する。ブライアンとロジャーが2人で歩み始めた旅路は、4人での日々が終わりを告げまた2人になっても続いている。映画みたいだ。そりゃ人生映画にもなるよ。

 

 そしてあまりにもこの映画のことを好きになりすぎて、アカデミー賞授与式が観たすぎて、生まれて初めてWOWOWの契約をしました。自分がWOWOWを契約するときがくるなんて本当に信じられない!!自分とは無縁だと思っていたものがバンバン自分の世界に入ってくるのすごい、パワーがすごい。そしてオープニングアクトQueenを見て泣き、ラミくんの主演男優賞に泣き、全部で4冠を達成したことに「Queenは4人だから全員に王冠を渡せるね」とかいうファンのツイートに泣いた。好きな映画があるとこんなにアワードシーズンが楽しくなるんだ!!という大発見があり、朝からTwitterにかじりついてオスカーのゆくえを見守るという経験をしたのも良き思い出…世界にはこんな楽しいことがあったのか…これを新たなライフワークにしたいな…

 WOWOWありがとう……

 

書きたいことがまとまらない。他にも、いろいろ、映画の細かい好きなシーンやセリフについても書きたいし、メアリーのことも、ボラプボーイズのSNS芸についても書きたいけど、Queenは歴史が膨大すぎるし現在進行形なので、知りたいことも考えたいことも多すぎる。まさか自分が50年前に発足した英国のロックバンドを好きになる日がくるなんて本当に思っていなかったけど、好きになってから毎日が楽しい。もっと知りたい、もっと聴きたい。好きになればなるほど、フレディがもう亡くなっているという事実がつらくなるけど、でも、なんか死をもって逆説的に永遠性を帯びたような印象もあるのが不思議だ。だって現に私は、既に亡くなっている、生きて動いてる姿を見たこともない人のCDを買って、聞いて元気をもらってるなんて奇跡みたいだ。

ジョンは業界を引退してQueenを構成するピースをもう1つはずすことで本当に4人時代のQueenに自らケリをつけたけど、同時にブライアンとロジャーはひどい鬱状態からもう一度立ち上がってQueenのレガシーを継承し続けると決めた、という、真逆の行動なのにそれは両方ともQueenを「永遠」にする機能を有しているように私には思えた。本当にこんなことが現実に起こっているなんてすごすぎて私には途方もなく感じる。

映画をきっかけにQueenを聴くようになった新世代として、なんであと50年早く生まれなかったの私〜〜〜と思わなくもないけど、でも、「間に合った」とも思う。同じ時代にギリギリ生きられてよかった。この映画をつくってくれたみなさんに感謝します。そしてこの映画に関わったすべてのひとの今後の人生に光が射しますように!Queen来日ツアー待ってます!!!!!!

 

www.universal-music.co.jp

楽しみ楽しみ!

 

ところで70年代のみんなまだ髪が長かった頃のLive映像が見たいんですけど何を買えばいいのでしょうか…有識者の方、よかったら教えてください…

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《備忘録》

www.huffingtonpost.jp

↑この記事読んでQueenメンバーの顔と名前、役者さんの顔と名前を覚えようとがんばった記憶…

ourage.jp

www.cinematoday.jp